目的

酵素などのタンパク質は、それぞれ固有のアミノ酸配列をもち、それが固有の立体構造に折れたたまります。これにより、アミノ酸配列上では離れていた残基同士が接近し、それらが協同して他の分子と相互作用したり化学反応を触媒したりすることができるようになります。タンパク質を含む生体分子が機能を果たすためには、その立体構造が本質的に重要です。生体分子は、ナノメートル(\( 10^{-9}\ \rm{m} \))オーダーの微小なものですが、X線結晶構造解析法やNMR法、最近ではクライオ電子顕微鏡などの手法を用いて、その立体構造(分子を構成している各原子の\( xyz \)座標)を決定することができます。それらの構造データは、公共の立体構造データベースに蓄積され、誰もが自由かつ無料で利用できるようになっています。コンピュータを用いると、これらの立体構造データにインターネットを介してアクセスし、さらに分子グラフィックスソフトウェアを用いてその構造を表示することが可能となります。

人間の肉眼では見えない生体分子をこのようにコンピュータ上で可視化することで、その機能に対する理解をいっそう深めることができます。ここでは練習として、加水分解酵素「アルカリホスファターゼ」のアミノ酸配列や立体構造に関するデータをデータベースから取得し、タンパク質の配列-構造-機能の関係を理解してみます。アルカリホスファターゼは、我々の健康診断の時に肝臓の機能を測る指標(ALP)として、生活に関わっているタンパク質です。

それでは早速やっていきましょう。